開かない窓

異変

でも…本当は何も知らないんじゃないか?
まあ、そうかもしれない。結局俺は、一番身近な奴の事ですら理解してなかったんだから。

考えれば考えるほど、自分の鈍感さが嫌になってきた。
このネガティブ思考は晃にも、隣にいる蓮にも叱られたっけ。
癖かな…と思いながら、蓮を見やると、彼はまだ月岡先輩の魅力について、熱く語っていた。

「…でもって!走るときの整ったフォームも……」


(そろそろ飽きてきたな……さっきの事でも聞いてみようか)

「その月岡って人さ、さっき警察と登校してる所を見かけたけど……なんかあったのか?」

そう尋ねた瞬間、蓮はさっきまでの破顔の笑みを曇らせ、俯いてしまった。

「蓮?」

「あ、あぁ悪い。そりゃ、全くの……って訳じゃないけど……警察……さか」

突然、声が小さくなっていった。何をいっているのか聞こえない。

「蓮?どうしたんだ?」

「なあ!やっぱ月岡さん、疑われてんのかな?だったら酷いよな…でも……」

蓮は俺の声が聞こえないらしく、ブツブツとうわ言を発し続けていた。

異様な空気が場を包み込む。
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