開かない窓
話にも脈絡がなくて、何を言ってるのかさっぱり解らない。
このまま放っておく訳にもいかず、俺は肩を揺さぶって声を掛けた。


「おい蓮!!どうした、しっかりしろって!!」

「……る」

か細い声で、何かを言った気がした。

「蓮!あ、あのさ……」

「い る」

「え」

蓮の目の焦点は虚ろで、目の前にいる俺を全く見ていなかった。視線の先は…俺の背後にあった。

『いる』
蓮は、確かにそう言った。
何がいると言うんだろうか?

(どうせクラスの誰かだろ…)
ここは教室だし、普通に考えてそれしか有り得ない。
そう考えていたが、俺には確かめる勇気が湧いてこなかった。
俺も、自分の背後から見られている気がしてきたのだ。
この感じ、初めてではない。ついさっき廊下で感じた、あの……

俺は大きくかぶりをふった。
有り得ない、先刻の視線だって俺の勘違いで、誰もいなかったじゃないか。
そうだ、蓮…ひとまずコイツを何とかしないと。

「蓮!!蓮ってば!!」
俺は必死に呼びかけた。
しばらくして、未だ放心状態が抜けきってはいないが、ようやく俺に気がついたようだった。

「え?あ、俺なんか言った?」

「いや……」

やっぱり憶えてないみたいだ。それにしても、さっきは……意識ってあんな短時間でとぶものか?


「そういやなんの話だっけ?月岡さん?今朝の…晃の事で、警察に事情聴取受けてたんだって」


なん…だと…?思わぬ発言に耳を疑った。
まさか、あの人が晃の事に関わってたなんて!
俺は、もっと詳しく聞きたかったけれど、躊躇してしまった。
さっきの蓮の変わりよう……明らかに、その先輩が何らかの形で関わってるような気がする。
話を蒸し返していいものか、判断に苦しむ。
また意識が飛ばれても、困るしなぁ…。
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