開かない窓
「は~い!席に着いて!HR始めるよ~!!」

「あ、りっちゃんが来た。話の続きは帰りながらだな。」

「ああ、解った。」

蓮は小声で俺に耳打ちすると自分の席に戻った。

「じゃあ、HRを始めるよ。既に知ってる人もいるかと思うけど、今日はこのまま休校になります」

「………!!」

その言葉に、生徒達が反応を示し、教室には再び喧騒が起こった。

「せんせぇー!質問!なんで休校なんですかぁ!?」

「正門に警察も来てました」


恐らくは、事情を聞かされていない生徒達から、次々に疑問の声が上がる。
チラッと蓮の気遣うような視線を感じながら、俺は静かに目を伏せた。


「はい、みんな静かに!」


それを受けた、鋭い担任の声が教室中に響き渡る。
休校の嬉しさから、楽しそうに質問した生徒は、ビクっと身体を縮こまらせて席に着いた。

「……今朝早く、この学校内で生徒が亡くなりました」

ざわざわと顔を見合わせて、話し合う生徒達。
日常から非日常に変わる瞬間。
それを聞きながら、俺は自分が引き返せない所まで足を踏み入れている事を感じていた。

晃の死の真相を解かなければ、普段通りの生活に戻る事は出来ない。
もはや、晃の為だけの問題ではなく自分自身がそこから抜け出すためにすべき課題でもあるのだ。


(ありえないが、仮に…もし仮に自殺なら自殺で構わない。なんでそうなったのか。絶対に、真実を突き止めてやる!)


「先生、誰が亡くなったんですか?」

先生は一呼吸おいた後、覚悟を決めたように吐き出した。


「ーー亡くなったのは、二年二組 北条 晃くんです」


先刻から、アル中みたく震えが止まらない膝の上に置いた握り拳を固く固く握り締め、今は亡き友の名を聞いた。
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