開かない窓
「いらん」

バッサリ切り捨てた。何を期待していたのかは知らないが、さっきまでキラキラと輝いていた蓮の顔が激しく歪む。

「え!?話の流れ的におかしくない?普通ここ『ありがとう……』って受け取ってギュッと抱き合う場面じゃないの!?」

「気色悪い事言ってんじゃねえよ!こんな鼻糞みたいなゴミ押し付けんな!!」

「鼻糞だと!貴様、俺の息子に何たる無礼な事を!!謝れ!」

「ホントの事言ってすみませんでした」

「うわ、酷い!やっぱ今日のお前変!絶対変だ~!!」

俺は蓮の声をわざと聞こえないふりをし、家までの坂を走って駆け下りていった。

息を切らして走りながら、俺は蓮の言葉を思い返していた。


「なあ、変わらないってさ、良いことかな?」


敢えて触れなかったけど、あの時、蓮は俺を責めていたような気がした。

何も言い返せなかった自分が、無性に悔しくて情けなかった。
(くそ!!)

俺はやり切れない気持ちに嫌気がさし、一心不乱に走り抜けると家路に着いた。

ドアノブにかけた手に違和感を感じ、今まで握り締めていた手をゆっくり開くと潰れて楕円型になった蓮の息子がいた。

悪い、蓮……お前の息子殺しちまったな。
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