開かない窓
『はは、冗談だよ!お前、めっちゃ頭良いもんな!テスト前にはよくお世話になりました』

ありがたや、ありがたやと呟きながら俺に手を合わせる。

普段通りの晃が、俺の目の前にいる。今までのは全て悪い夢で、これこそが現実なんじゃないかと思った。

俺のささやかな願いは、晃の言葉で打ち砕かれた。

『なんかさ、悪かったな。勝手に死んじまって』

「…………え?」

『一応さ、お前には携帯で知らせようと思ってたんだぜ??「俺、今死んだみたい~」って。けどこっちって電波繋がんねーの!緊急時くらい繋げってんだよな…』

明らかに、俺を笑わせようと冗談を言ってくれてるのが伝わってくる。
前から思っていたがこういう所、本当に蓮に似ている。


が、この時の俺には、晃の期待に応えて笑顔が作れるほど心に余裕がなかった。

そんな俺の横顔を、寂しげに見つめていた晃がポツっと洩らした。

『俺のせいで…ごめんな』

「そんな事ない…!お前のせいじゃない!」

『そっか?なあ、優一。俺が言うのもなんだけど……あんま焦んなよ?』

< 55 / 191 >

この作品をシェア

pagetop