開かない窓
「晃……」

『殺されたのか、事故かわからない。でも俺は、生きたかった。これだけは言える』

「生きた、かった?じゃあ、自殺じゃ…ないんだな?」

「……解らないんだって」
確認するように聞く俺を、晃は優しい笑顔で見ていた。

「こんな事言いたくなかったけど……よかった……お前が自分から死を選んだんじゃなくて」
みっともなくボロボロ涙をこぼしている俺を、晃は優しく見つめ、『なっさけねー』と言いたげな表情を浮かべていた。

『勝手に決めつけてんなよ。優一……折角だし、少し話さね?』

「話?いいよ、もちろん。」

『そっか!俺さ、前から思ってたんだけど【※もみまん】って美味しいのかな?優一、今度宮島行って食ってきてくれよ』
晃は嬉しそうに話してくる。

※平清盛で有名な宮島の特産品

最初からなんてマニアックな会話だろうか。
まあ、そこが晃らしい。彼は見かけによらず、かなりのオタ気質を持ち合わせている。


俺はどんどん聞いてくる晃の質問全てに、ワザとゆっくり答えていった。

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