開かない窓
そんなしょうもない事を考えていたら、学校に行く時間となった。あまり気が乗らないが、休む理由も思いつかないので仕方なく腰を上げる。

無理矢理、教科書を鞄に詰めこみながら、俺は窓の外を見た。
眩しい日差しの中、ひぐらしが鳴く声が聞こえる。それは青葉が生い茂る庭の草木の1つに止まっていた。
セミといえど、ひと夏という短く限られた生を一生懸命生き抜こうとする姿に少し感じるものがある。

(晃だって、生きたかったんだ・・・・・・)

死者のことを忘れることが出来たらどんなに気が楽か。でも、忘れてしまったら人として終わってしまう気がする、多分。

(それだけは絶対に嫌だ。)

晃に、死者にこの気持ちは届いているだろうか?届いているなら晃は何と思うだろう。
俺は暫く目を閉じ、時間ギリギリまでひぐらしの鳴く声に耳を傾けていた。
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