開かない窓
俺は驚きもせず彼女の言葉を黙って聞いていた。
蓮に聞いた時から、やはり心の隅に晃の事が引っかかっていたのだ。

「優一君は晃と仲が良かったから、貴方には先に知らせなきゃって…」

「わざわざ、すみません。おばさん…辛いかも知れないけど元気出して下さい。」

自分でも驚くほど冷静に月並みな言葉しか言えない自分に嫌気がさしたが、彼女は気にとめることなく
「ありがとう…ありがとうね」と何度も泣いて言いながら電話を切った。

まあ無理もない、自分の息子が死んだのだから。という俺も会話を終えた後もしばらく何も出来ないくらいにはショックを受けていた。

当分の間意識は完全にどこかに飛んでいたが、突然我に返った。

きっかけは、皮肉にも電話の着信音だった。
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