不良の弟
『カレーぐらい別でよくね?何でそんな事言うの?』
動揺した後はキレたらしい昴くんの言い方は結構怖かった。
声に威圧感があると言うか…とにかく寒気がした。
けど、そんな事でくじけるようなあたしじゃありませんよ!!
悪の侵略者にだって勝てたんだもん!
百歩譲って、レイに騙されて仲間になってるって事にしてあげよう。
「昴くんにとってはどーでもいい事かも知れないけど、あたしにとっては結構大事なんだ。それに、こっちの方が先に約束したしね?」
宥めるように、諭すように言ったのがさらに気に入らなかったのか。
『詩織ちゃんって彼氏よりも弟選ぶ人だったんだ?初めて知ったよ』
冷やかにははっと笑いながら言った昴くん。
さすがにあたしの短いドッキドキタイムも終了したかな、と思った。
いや、かなり失礼な事言ったし…あながち自分で間違ってるとは思わないけど。
これあたし言われたら、多分、切れる。
あたしに限って言わないけどね、わっはっは!
って言ってる場合じゃないしね!
短かったなぁ…あたしの初カレ…
告られたその日のうちに振られるってどうよ!
あたしの人生に中の五大イベントぐらいに確実決定だな。
『…いい子なんだね。詩織ちゃん』
はい、そうですよね。
分かってました。
………。
ってえぇ!?
あたしの予想してた展開と全く違うんだけど。
‘今まで…って言うほど長くないですけど、ありがとうございました’っていいそうになっちゃったよ。
…誉められてるんだよね?…きっと。
怒らないんだ…心が広いだね。
あたしは半信半疑で昴くんの言葉をリピートしてた。
‘いい子’なんて言葉久し振りに言われたよ。
あたし、自分では気付かなかったけどとてもいい子だったの?
家庭訪問だって、面談の時だって、もっと落ち着きましょうって毎回言われてたあたしがいい子!?
昴くんの勘違いに決まってる。
あたしがいい子なはずはない。