不良の弟

デート当日





朝、起きると泣いていた。
涙は乾いていたけど、鏡を見ると泣いた跡が残っていた。

きっとあの夢を見たんだろう。



思い出したくもない記憶。



なのに、時々夢となって出てくるのはあの事実を消したいから?



時計を見ると、10時前。
シャワーを浴びて、準備するには十分な時間だ。


リビングに行って見ても、家のどこにも零はいなかった。

そう言えば、電話来たのに最後まで聞かなかったから、あれ今夜帰らないって事いいたかったのかな?と勝手に結論づける。


シャワーを軽く浴びて、服を選ぶ。
昨日の事もあるし何だか気まずいから、ショートパンツに花がプリントされてるTシャツを合わせる事にした。
あんまり、張り切ってると思われるのも嫌だしね。


昴くんは昨日、あたしの家に迎えに来るって言ってたけどあたしの家知ってる訳がない。
昨日だって一緒に帰ったけど、それは2人が一緒な駅までだし。

知ってる訳がない。



そう思ってると、‘ピンポーン’と聞きなれたチャイムの音がした。


はーい、と相手に聞こえるか聞こえないか微妙な声で言いながら、がちゃっと玄関を開けると、眺め続けた黒髪の爽やかな笑顔が立っていた。

あ、違う。
爽やかな笑顔の人が立ってた。

いまだにこんなにかっこいい人が自分と付き合ってていいのか、疑問に感じるけど。



それはこの際気にしないでおこう。



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