不良の弟
何度も謝ってから、昴くんはもう一度切なそうに悲しそうに笑うと前をまた向いた。
何が何だか意味が分からない。
この状況も。
昴くんも。
これから先に起こることなんて予想もつかない。
どうして?
今日は楽しい、楽しい昴くんとの初デートだったはず。
どうして、こんな事になってるの?
あたしに分かるのは、先に待ってるのがいい事じゃないってことだけだった。
「…なして」
「えっ?」
「放してっ!!」
あたしは何とか腕をはずしてもらおうと腕を一生懸命振ったけど、男の人の力は当然そんな事じゃかなわなくて。
ただ、ただ怖くて、昴くんの顔さえ見れなかった。
「…お願い…放して…」
あたしの願いは届いたかどうか分からない。
でも、さらに手をつかむのが強くなっただけだった。
我慢しようとすればするほど、目頭が熱くなるばかりだった。
ここで泣くのだけは止めたかった。
というよりあたしのプライドが許さなかった。