不良の弟



前を歩く昴くんの背中は冷たく感じた。


けど、昴くんを嫌いになるとか、憎いって思うとかはなかった。
というよりできなかった。


だってあんなに謝られたら嫌いになりたいものもなれない。
謝ってくれたのは、昴くんに優しさがあったからって思ってしまうから。



昴くんの足が急にとまった。
きっとここが決戦の地よ!詩織!

あたしは正義の味方でしょ!大丈夫。


自分を奮い立たせると不思議と何にも怖くない気がした…

って言うのはあたしの理想。


ほんとは怖くて仕方ない。
脚がすっごく震えてる。

何でかわからないのに、嫌な予感だけがあたしの心を覆っていた。



そのお店は廃墟みたいな感じだった。
けど、確かに何かのお店だった事は確かで。


その証拠にそのお店には、看板らしきものがある。


あたしはぐっと手を握り締めた。
汗がかいてるのが自分でも分かった。



逃げられない。



…怖いよ、零。


こんな時に浮かんだのは零の笑顔だった。





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