不良の弟




チャリン


店の中に響いたのは、近寄りがたい風貌とは全くかけ離れた明るい音だった。
その音にほっとしたのもつかの間。

あたしは痛いくらいの視線を浴びせられた。


恐る恐る顔をあげると、そこにいたのはいかつい顔とカラフルな髪を持った人ばかりだった。


怖くはないと思った。
そんな人は、しょっちゅう見慣れてるから。
零が家に連れてきたりして。


でも、目が怖かった。
睨んでるとかそんな類じゃない。
ニヤニヤとした笑いを浮かべながら、何かを企んでる目つき。



何なの?

何がそんなにおもしろいの?



聞きたかったけど、声が出なかった。
人間ほんとに聞きたいことがあっても、怖くて声が出ないらしい。
震える心を隠すように冷静に分析してみる。



「この奥だから」


昴くんはそれだけ言うと、また手は繋いだままスタスタと歩きだした。

店の中は外から想像できるように、ぐちゃぐちゃだった。



テーブルは倒れて、そこらじゅうにビンが転がってる。
ソファはいろんなところに向いていて、その上にカラフルな頭の人たちが座ってる。
カウンターにも座ってる人がいて、お酒を飲んでいたり、たばこを吸ったりしてた。


…どっかの溜まり場なの?




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