不良の弟
壁には、誰かのポスターとかが貼ってあったりしてた。
そして、あたしは見つけた。
…これは。
……竜鬼。
零たちは、暴走族じゃないから名前とかはない。
昔は暴走族ばかりだったけど、今じゃそっちの方が珍しい。
竜鬼は、この地区唯一の暴走族。
人数はそれほど多くないけど、達の悪い人ばっかりだって。
…零が言ってた。
マークは、名前の通り竜の絵の真ん中に鬼の影がある。
分かりやすいからあたしも前に見た時に覚えてた。
竜鬼なのか…この人たちも、昴くんも。
この先に待ってる人も。
ピロリ
男たちのひそひそとした声以外に聞こえない空間にあたしの好きな曲が流れた。
…零だ。
思ったのと同時にこっちを昴くんが向いた。
「…切れ」
「え?」
「切れってんの。ケータイ」
「でも…」
「切って」
さっき謝ってくれた時とは違って、低くて冷たい声だった。
あたしはその声に驚いた、と言った方が正しいかも知れないけど、さっとケータイを取り出した。
で、鳴っているケータイに出た。