不良の弟
「もしもしっ零!?今ねっ竜鬼のっ…」
途中まで言ったところで、ケータイはあたしの手から消えていた。
空っぽの手を見てから、昴くんを見ると、人差し指で電源を消してるところだった。
ちっと舌打ちが出そうになって慌ててそれを抑える。
暴力だけは勘弁したいものだ。
「何で、出たの?消せって言ったよね?ケータイ、帰るまで没収だから」
笑顔も何もなくただ言うと、ケータイは昴くんのジーンズのポケットの中に見えなくなった。
最後の望みの綱さえもあたしは失って、大きなため息をついた。
「ついて来て」
昴くんは…もうっこんなやつ昴でいーやっ!
昴はそれだけ言って、あたしの腕を掴んで更に奥に進んでいった。
奥の廊下には扉が二つあって、その一つの前に立ち止まった。
「ここだ」
あたしの方を見ないで言うと、コンコンとノックをしてから入っていった。
「おっ!昴ー来たか!待ってたんだけど」