不良の弟





呼び捨て事件で、あたしはマシンガントークを止めた。
そして、緑とオレンジと偽爽やか少年を睨みつけた。


「帰らせて。あたし、もうここにいたくない。ケータイも返して。今、何時なの?あたし約束してあったんだけど。守れなかったら、あんたらのせいだからね。あり得ない」



あたしの目に涙がにじむ。

押さえろ。

押さえろ。



ここで、泣くな詩織。



「詩織ちゃん…?」


涙を浮かべたあたしを見て、不審そうな声を昴が出す。


だって、あたしは破っちゃいけなかったの。
零との約束を。



『詩織ちゃんだけはずぅっと一緒だよ』


涙でぐちゃぐちゃになった顔で零は言っていた。
あれは幼い頃の記憶。


『分かった。零との約束はぜぇったい守るよ』


忘れる事のない、大事な大事な記憶。



今まで、破ったことのないその約束をあたしは今日破ってしまった。




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