不良の弟
「詩織!着いたよ!」
妙にテンションの高い梨花が言った。
はぁ…いよいよか。
「何してんの?早く降りるよっ」
梨花に腕を引っ張られながら、車を出る。
「まっ待ってよっ!あたしにもね!一応心の準備ってもんが…」
あたしの必死の説得も梨花に聞き入ってもらえる事はなくて。
車の中から、無理やり出された。
「なーに言ってんの。何の準備が必要なのよ?」
だから、心の準備だって…
「おかえりっす!」
続くようにして、色んなところから声が出る。
それは、当然と言うようにとてもじゃないけど、傍から見たらいい人には見えなくて。
言われてるのはあたし…な訳はなくて、梨花。
何を隠そう梨花は、ヤの付くご家庭の出身でいらっしゃる。
でも、梨花のその性格は、決して裏のお方だなんて感じさせない明るいお父さんと可愛いお母さんによるものだと思う。
と、分かっていてもそういういかつい人たちに囲まれるのは、慣れてる訳ない。
慣れてるのは、この家の人たちくらいなもの。
時々夢じゃないかって思う。
ヤの付く人たちなんてあたしの人生をどうひっくり返しても出るはずはないんだけど。
まぁ、梨花と出会えたのも梨花のお母さんが産んでくれて、この家で育ったという過去があるから。
偶然じゃなくて、必然や運命なんだと思う。