不良の弟
「もしかして…もう、何か昴と蒼先輩と海先輩にされたの?」
零もそう聞いた。
でも、された…って言われると特に思いつかないんだよね。
適当な相槌が思いつかないあたしは曖昧に笑った。
梨花の顔が不安そうに歪む。
「そうなの?そうなんだね?」
「零がっ」
「零くんが何?」
焦り始めたあたしは零の名前を口走ってしまった。
「…助けてくれたから。だから、大丈夫」
実際はそんなに助けられるようなことされてないけど。
梨花の眼力に負けてあたしはとうとう喋ってしまった。
梨花の顔がほっとしたようになってから、怒った顔になった。
「それなら!何で連絡してくんなかったの!」
本気で心配してくれる。
普段、あたしにはそんな人零くらいだからその感覚が堪らなく心地よかった。
もう少しだけ、この感覚を感じていたいとあたしの弱い心は思ってしまった。
「番号分かんなくて…」
「もう、それぐらい覚えといてよ。今度から、何かあったら電話して?」
梨花は、あたしがあげたメモ帳にすらすらと何かを書いてあたしに渡した。
梨花の電話番号だった。
理由は分かんない。
けど、涙があふれた。