太郎物語
それから、話が終わったようで、蔵木さんは俺のほうへやってきた。



「なにかいい本、ありましたか?」


「うーん。あんまり。蔵木さんは何買ったの?」


「小説ですよ。海田陽介さんっていう作家の」


「知ってる!リアルかくれんぼ書いた人でしょ?」


「そうそう。あの人の新作が出てたから」



よかったー。俺、小説嫌いだけど、海田さんの本だけは読んでるんだよな。




これで、親しみやすい人とか思われたかな?



「そろそろ帰る?」


「はい」


そう言って、お見せを出ようとしたとき、声が聞こえた。



[ねぇ…買ってよ。私を買って。お願い]



って、かなり怖ぇよ!ホラー?俺霊感あったの…?



[お願いだよ…。おい!聞いてんだろ?]



なんだか、一瞬だけ素が出ちゃった女の子みたいな声が聞こえた。



店内を見渡すと、一作だけ光っている本がある。



「なぁ、ちょっといい?」


「うん」



俺はその本のもとへといった。光っている本は、絵本だった。



【本の御姫様 レンミ】



???



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