不器用なLOVER
「透弥さん…」

視線を上げた透弥さんに、

「…ぎゅってして」

一瞬目を丸くして、細め…

「して欲しいの?」

口角を上げた。

素直に頷いて静かにその胸に頬を寄せれば、

二つの腕でしっかりと抱き締めてくれる。

これで我慢しなくちゃダメ。

透弥さんはもっと我慢してるし。

でも…

「キスして」

透弥さんを見上げる。

「1つ目のお願い」

私を見つめる透弥さんは、

「晶からキスして」

心を読まれてしまったような、
透弥さんのお願いに…

私は放心して見つめ返す。

「してくれないの?」

「出来ないよ…」

私からなんて出来ない。

「出来ないならペナルティーに、1つ加算させるけど…」

1つ加算って元々8つもあるのに…
うつ向きかけて上目使いに見れば

透弥さんはまた目を細め、

「晶に選ばせてあげる」

口角を上げた。

「ディープキスか…」

一旦言葉を切り、

「…フレンチキス」

ディープってのは舌を絡ませる、濃いキスってこと?

ならフレンチってのはライトキスだよね?

それぐらいなら、出来るかも?

真っ直ぐ見つめる透弥さんに、

「目…閉じてよ」

呟くと、

「どうして?見ていたい…」

鼓動が一つ大きく波打つ。

「だっ…ダメ」

必死に拒否すれば、
目尻を下げて閉じてくれた。

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