不器用なLOVER
「偶然だね?何してるの?…ってかひょっとして今声掛けずに帰ろうとしてた?」

私の返事も待たずに、

「うわぁひっでぇ〜。マジ有り得ねぇから。こんな偶然早々ねぇのによ。ってか奇跡じゃねぇ?」

矢継ぎ早、私の肩に手を回す。

「俺さ、今から家帰って期末試験に備えようと思ってたんだけど、一人だと自信ねぇってか寝ちまいそうでさ」

何故か出入口に向かわされてる。

「あぁ俺、めっちゃ寝起き悪いの目覚ましとか全然でさマジムリ。でも晶ちゃんの可愛い声なら、
一発だね?」

自動ドアが開き外に出されて、

「マジになんのも本当に久々で、今更かもしんねぇけどこの三日が勝負なんだよね」

口を挟む隙間がない。

「あぁ、勝利の女神が俺に微笑みかけてくれちゃったりしたら、
もう俄然燃えるんだけどなぁ」

駐車場の隅少し離れて街灯がある

「今回だけは負ける訳にいかねぇから…」

奥まった所に人通りもなかった。

「透弥にってより、自分に」

突然立ち止まって顔を覗き込まれ

「だからさ、俺のこと応援してよ晶ちゃん」

いつかのような切な気な声で、

「頼むよ…。今だけでいいから」

瞳を揺らめかせ、

「俺を見て欲しいなんていわねぇから…」

近付く。

「透弥だと思ってていいから…」


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