不器用なLOVER
次々に直されていくノートを見て
顔が熱くなってくる。

「あの、もういいです」

ノートを隠そうと手を伸ばすより
一瞬速く、
透弥さんはノートを持ち上げ

「今更、恥ずかしがる必要ないんじゃない?」

確に頁を跨がず入る赤い文字…。
どんだけ間違ってんのよ。

「…マルクスと近代の違い把握してるの?
マルクスの労働価値に対して、
近代は効用価値が採用されてるでしょ………
……だからこの場合、パレート効率を達成したことになるよね?」

聞き慣れない単語が、
頭の中を支配する。

「ちゃんと聞いてる?」

涙目になりながら小さく頷く。

「…選択授業は何を採ってるの?」

週2回ある選択授業
自分で好きな科目を選べる訳だけど…。
今のところまだ選択した記憶がなかった。

「多分まだ決めてない…」

「だったら、行動と社会がいいんじゃない?」

自由に選べると言っても、
人類、社会、政治、行動学
……難しいのばかりで、
どれも選びたくないというのが本音。

眉をひそめ無言だったからか、

「行動学の正式名称は、
行動心理学…。
人の心理を勉強する科目だから、
効用価値の理解に多少は為るんじゃない」

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