不器用なLOVER
「ピアノとヴァイオリンをかじった程度だよ。この学園の生徒ならそれぐらい普通じゃない?」

そうなんだ…。
普通に習ってるもんなんだ。

畏縮してしまった私に、

「…社交界では必要な場合があるから損はないってだけだよ」

然り気なく、

「孰れにしても晶も覚えておいて間違いはないと思うけど?」

勧奨するけど、

「でも私には社交界なんて場違いっていうか世界が違うから」

苦笑して答えた。

一般家庭の私には夢の世界だよね
想像も出来ない程に雅やかな世界

一度ぐらい経験してみたいかも?

「僕と居れば嫌でも切り放せない世界だよ」

当然のように断言した。

それってどういう意味なの?
この先の未来にもずっと私を傍に置いてくれるってこと?

確かめたいけど…。

「…朋弥はサックスも吹ける」

突如思い出したように話し出す、透弥さんを見つめた。

「負けず嫌いの努力家で出来ないことが悔しいって、一人で黙々と続けるんだ…」

子供の頃を懐かしむ透弥さんは、顔を綻ばせてる。

「その割にいつも長続きしなくて僕が何か新しいこと始めた途端に興味の対象を替え見向きもしなくなるんだ」

愉しそうに話すその様子からも、朋弥さんを好きなことが伝わる。

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