不器用なLOVER
私が両手で抱えるように持ってたミシンを片手で担いで会長室まで運び、

「透弥は会場の準備?」

そのままソファに寛いでしまった朋弥さんを追い出すようなことは出来るはずもなく…。

ミシンの準備をして団旗を拡げた

縁を縫うだけだから…。

ミシンに充てた手を、

「ちょっと待った」

朋弥さんが掴んだ。

「晶ちゃん…それミシンにかけるつもりなの?」

驚いてる朋弥さんに、

「ダメ…ですか?」

戸惑う。

「ダメってか、多分針折れるし…糸絡まるだけ」

団旗とミシンを見比べる。

「その布はさ、結構分厚いってか摩擦にも強いちょっと特種なヤツだからさ…」

紋章はプリントじゃなくて
刺繍されてるけど…。

「それ直すなら手縫いするしかないよ…?」

そんな…。
もう時間もないのに。

パニクって涙が溢れる。

だから透弥さん業者に依頼するって言ったんだ。

引き受けてしまったのに…
今更出来ませんって言ったら、
透弥さん困らせるよね?

泣きじゃくってしまった私の頭に手を軽く触れ、

「俺も手伝ってやっから、
透弥喜ばせてやろうぜ?」

朋弥さんが微苦笑を浮かべた。

透弥さんを喜ばせたい。

朋弥さんに頷き、
涙で濡れた頬を擦った。

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