不器用なLOVER
不意に朋弥さんが振り返って、

「っしゃ、終わった」

ガッツポーズを取る。

危なかった…。
朋弥さんにまで、
見られるとこだったよ。

「なら先に帰りなよ」

透弥さんは朋弥さんも見ずに伝え

「ミシン片付けてから帰るから」

立ち上がりミシンを手にする。

「あっそ…じゃあ晶ちゃん帰ろ」

朋弥さんの誘いに、
私は透弥さんを見つめてしまい…

「ちゃんと送ってくって…」

朋弥さんが呟いた。

「晶は僕が送ってくから。
朋弥も疲れたでしょ?
ありがと助かったよ」

透弥さんは持ち掛けたミシンを、再び置き直し…

その手を差し出す。

私は迷わず笑顔で
その手を握り締める。

その様子を見ていた朋弥さんに、

「晶ちゃん…泣いて寝たから目がヤバイことになってっけど?透弥にその顔見せちまって良いの?」

意地悪い顔で微笑みかけられて、

「嘘」

慌てて鏡を探し首を回した。

透弥さんが片眉を上げ、
朋弥さんを見てから、

「振られたからって…
当たらないでよ」

そのまま手で引き寄せた私に、
目線を合わせて目尻を下げる。

「大丈夫。晶は可愛いよ」

そんな風に囁かれたから、
体温が急上昇してうつ向く。

「見せ付けんなっつうの」

朋弥さんはぼやきながら、

「透弥、お礼とお詫びは態度で、示せよ?」

片手を頭の横で振り、
部屋を出て行った。

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