不器用なLOVER
ところが、
真姫に無理矢理起こされ、

「中の様子しっかり教えなさいよね?」

鬼の形相で睨まれた。

意味が把握出来ずに首を捻って、
瞬きを繰り返す。

「で、どっちと出るの?」

登喜子の問掛けに、
クラス中が静まりかえり、
此方を注目する空気が漂う。

「えっ?どっちって?」

益々混乱する私に、

「何で晶ばっかモテんのよ」

登喜子が食い付き、

「物珍しさからじゃない?」

真姫が冷静に突っ込む。

「会長にしろ朋弥先輩にしろ、
上流家庭の英才教育受けてるエリートだからね。晶みたいな平凡な子と関わったことないから。
自分の知らない感覚が新鮮なんでしょ?」

真姫の言葉が、
胸の奥深くに染み込み突き刺さる

「傷付いたかもしれないけど…。それが現実だから。晶も早いとこ手を打たないと傷はもっと深くなるよ?」

冷たいようだけど、
これは真姫なりの心配で、
優しさなんだと分かる。

「でも…だからこそ、
今は目一杯楽しみなよ?
通常では経験出来ないことも、
あの二人なら叶えてくれるから」

真姫はそう不敵に笑った。

「そだね?晶は今は御伽の国の、お姫様なんだから」

登喜子が乙女な発言をするので、

「シンデレラ姫ってこと?
じゃあ魔法使いのお婆さんが必要じゃない?」

私も合わせてはにかめば、

「あっちゃんは、
自力で魔法を掛けたのよ?」

衣里が静かに微笑んだ。

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