不器用なLOVER
自力で魔法を掛けたシンデレラ姫
御伽話の世界なら、
魔法が解けた後でも
王子様は微笑みかける。

「解けない魔法があればいいのにずっとお姫様でいられたらな…」

口を付いて出た言葉は、
誰も居ない廊下に溶ける。

登喜子の乙女がまだ残ってるよ。

実行委員の皆が集まって、
応援合戦の練習をするというので
一応私も体育館に向かっている。

練習があることは昨日朋弥さんに聞いていたけど。

誰も私を呼びには来なかったのに
私が行ってもいいのかな?

不安を抱えたまま体育館を覗いて

副会長さんと目が合う。

「里中さん遅刻です。
罰則として校歌斉唱3番
お願いします」

えっ〜

全員が私を注目した。

鼓動が高鳴り体温が上昇しているのに冷汗が滲み。

嘘でしょ?

さ迷わせた目が透弥さんを捉えた

全体を見渡す隅で静かに腕を組み目尻を下げて微笑んでいる。

ホントに歌わなきゃダメかな?

しかも3番なんて1番もはっきりと覚えてないのに。

緊張と不安で透弥さんが滲出す。

「と…
「全員集合して時間もないのに、いつ練習始めるつもり?」

透弥さんの名を呟く声を打ち消す
凛々しく通る声が響き渡り、
一斉に会長に視線が集まった。

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