不器用なLOVER
体育祭が始まれば、
実行委員の仕事は山積みで、

「里中次の競技用のネット…」

「里中さん次ゴール前で順位見て」

「里中さん2位の旗…」

「里中次の競技者スタンバイ…」

あっちへ走り、こっちへ走り、
縦横無尽に使われて…。

疲れた。
自分の出番は当分先なのに、
既にバテてきちゃった。

でも実行委員の人は皆同じなんだから頑張らなきゃ。

次の競技は…。
3年男子の障害物走だ。

透弥さんの番だから、
出来れば落ち着いて見ていたい。

でも…。

見渡す限り
実行委員の皆は休みなく走り回っていた。

気合いを入れ直して、
プログラム片手に的確に指示を出し続ける透弥さんに近付く。

「透弥さん次出番だよね?
私は何をすればいい?」

私を見つけた透弥さんは、

目尻を下げ、

「晶の次の仕事は…これを持って待ってること」

今は1年女子の玉入れの競技中で出番のない1位の旗を手渡す。

「必ず晶にゴールするから、信じて待っててよ」

ゴールするから
って言葉が凄く意味があるような気がして…。

受け取った旗を両手で抱えて
見上げる。

「頑張って…とか、
言ってくれないの?」

透弥さんが目をそらして呟く。

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