不器用なLOVER
スタートのホイッスルが響き、
透弥さんが瞬時にゲートを抜けた。

「流石生徒会長…」
「見ろよ朋弥も…」

淡々と障害物をクリアーする透弥さんに横並びで、

クリアーの都度ガッツポーズ等をする朋弥さん。

それにしても二人共にホントに
身体能力が高い。

8段の飛び箱に
よじ登ったり、
飛び乗ったり、
引っ掛かったり、
着地に失敗したり…。

そんな中で二人の演技は高い跳躍に見事な着地。

余裕さえ感じさせる。

2問目の問題を
朋弥さんが先に抜けた…。

噂でしょ?

「嗚呼、噂は本当だったな…」
「生徒会長用の問題には大学入試レベルを出すって…」

外野の声に、
鼓動が高鳴って…。

解けないはずはない。
けど…、
1問に時間が掛ってしまう。

祈る気持ちで見守る。

その間にも朋弥さんは2mの壁に、手を掛けた。
後方の選手達が飛び箱を終えて、追って来ている。

問題に並ばれる寸前に抜け、

壁の天辺に手を掛け腕の力だけで引き上げ両足で飛び越えるという

荒業を身軽に淡々と、
やって退け、

壁から降りた朋弥さんに並んだ。

「透弥お前本気出し過ぎんだろ」

朋弥さんの嘆声が響き、

「朋弥の方こそムキになってるんじゃないの?」

透弥さんの声が通る。

「お前はいつでもトップ取ってんだたまには花持たせても良くね?」

問題に取り組む透弥さんに、
朋弥さんが話し掛ける。

「ダメ。朋弥には負けられないし約束したから」

朋弥さんを見ることなく、
解きながら返していた。

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