不器用なLOVER
ゆっくりと真っ直ぐ見上げて、

「晶ちゃんのお陰で壁取っ払えたってかさ、多分あれが本来の宮原透弥なんだ。誰にも染まってねぇ真っ新で無透明…その癖完全無欠な嫌味な奴」

微笑を浮かべ、

「晶ちゃんにはマジ感謝してる。何年ぶりに見たわ…透弥のあんな楽しそうな顔をさ」

はっきり明言した。

「だから俺も手加減は出来ねぇ。アイツのマジに水差せねぇから…勝つ気で行かねぇとな」

朋弥さんも透弥さんと同じ気持ちなんだ…。

「朋弥さんは側近役を辞めたって聞いてたから…透弥さんのことを今も見守ってたなんて思ってもなかった」

口を吐いた私の本音を聞いて、

「あ〜何だ…見守ってきてたわけじゃねぇから…」

歯切れ悪く、うつ向き

「偶々目に入っちまったってか」

諦めて溜め息を吐くと、

「仕方ねぇじゃん…俺も宮原家の長男なんだし」

片手で後頭部を掻きながら、
立ち上がった。

「んな簡単に主人見捨てられねぇんだわ。命ってか…人生を掛けるように育てられてきたんだしさ。それが身についちまってんの」

何でもないことのようにさらりととんでもない事を言って、

「例え…アイツが俺を必要としてなくてもな」

一瞬だけその長い睫毛が陰を作る

「悔しいから絶対言わねぇけど」

自嘲気味に笑った。

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