不器用なLOVER
抱き締められた状態で、透弥さんの鼓動を体に感じる。

高鳴った鼓動が次第に合わさり、落ち着いてきた。

ゆっくり体から離れ見上げれば、視線が重なる。

「さっきのホントに朋弥さんだと思う?」

「間違いないよ」

力強く一つ頷く。

「ならどうしてすぐに納得したりしたの?」

私の髪に指を通し優しくすく。

「朋弥が認められないのには、
何かしら事情があるんだと思う。それを無理して聞き出す必要は、今は感じられないからだよ」

朋弥さんの事情って…。
停学中だったからかな?
側近から外されてるからかな?

首を捻り考え込む私を見て、
ほくそ笑む。

「例えば晶が同じ様な立場なら、仕掛ける企業買収の相手が学園の関係者だった場合僕本来の性格を考えてみれば、並々ならぬ理由があることは直ぐにでも推察出来るでしょ?」

そうかもしれない。
初めてその話を聞いた時の私さえやり過ぎだと思ったぐらいだ…。

人の気持ちが最優先の透弥さんに酷な事を為せてしまったんだと、改めて感じた。

「理由を聞く事は勿論出来るけど朋弥なら態々そんな事をしてまで僕の真意を確認するはずがない。僕を鈍らせることに繋がるぐらいなら黙殺を決め込むだろうね」

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