不器用なLOVER
スタートの音にハッとしてその動向に目を向ける。

各者横並びでのレース運びに、

「皆速い…」

感嘆の声を漏らす。

「晶ちゃんは足遅ぇもんな?
さっきの徒競走も最初から諦めてんのか一人だけ歩いてたし…?」

歩いてたわけじゃない。
勿論真剣に走り抜いた。
ビリだったし遅いのは確だけど。

当然これも朋弥さんの嫌味だ。

朋弥さんを睨み、顔を背けた。

「組の代表で選ばれてるんだから速くて当然でしょ?」

透弥さんにまで冷たく言い放され気持ちが一気に萎む。

その頭に軽く掌を当て、

「優性の法則に因り、優性性質が遺伝していくことになる訳だから…晶が遅くても僕の性質が優性であれば何も問題はないよ」

突然遺伝子学の話をされても…。
正直意味が分からなかったけど、恐らく慰めてくれてるんだろう。

「晶ちゃん騙されんなよ?
難しい話して濁してやがるけど、今の直訳すりゃ…『心配しないでヤらせろ』ってことだからな?」

朋弥さんに耳元で告げられ。
顔が熱り出す。

そうなの?
そういうことなの?

思わず透弥さんを見上げる。

片眉を上げ怪訝な表情を浮かべて

「あんまり晶をからかわないで。って何度も言ってるよね?」

朋弥さんを直視した。

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