不器用なLOVER
三走順目に繋がるバトンを一組が落とし大きく出遅れた。

「俺は…特定な子作ってねぇし、ファンクラブなんてもんねぇから何も心配してねぇけど?」

親衛隊があるのは、確に透弥さんだけで熱烈な追っかけも付いてる…けどそれで特定な彼女が居ると心配するってことは、

透弥さんも気付いたのか、

目が合った。

「もう晶には誰にも手出しさせるつもりないから」

透弥さんが力強く言い切った。

透弥さんは人目を気にしたりせずに私に触れる。

それは恥ずかしいけど…実は少しだけ嬉しかったのもホントだ。

そんな気持ちの奥を透弥さんは、感じ取っていたのかもしれない。

自分より人の気持ちを酌み取り、望まれる最良の行動の上を行く。だけど何よりも私の気持ちを優先させてしまう人だから。

だから、いつも透弥さんのことを気に掛けている朋弥さんは戒めていたのかもしれない。

自分の小ささと愚かさに情けなくなって唇を噛み締めた。

「晶…朋弥が言ってるのは僕等の親密加減についてじゃないよ?」

潤んだ瞳で見つめる。

「裏を返せば、朋弥も晶のことを守るために近くに居るってこと」

透弥さんの言った意味を巧く飲み込めなくて瞬きを繰り返す度に、溜った粒が溢れ落ちた。

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