不器用なLOVER
1トラック200mの間で、
順位がバラつき出してた。

「ファンクラブに彼女のキーワードぐらいじゃお前は晶ちゃんが危ねぇって気付くはずがねぇもん…」

朋弥さんの含みを籠めた発言に、

「…どういう意味?」

透弥さんの声が体に伝わり奥深く響く。

「お前は本当に過小評価し過ぎんだよな…。お前の周りには確に、お前を認めず疎ましく思う連中も居るさ。
だが、んだけじゃねぇってこと」

透弥さんは自分が必要以上モテることに全くと言える程に鈍感だ。

その事に気付いて欲しいような…欲しくないような。

顔だけで見上げれば、
意味に辿り着かないのか、
目を閉じ首を捻ってる。

前走順にバトンが渡る前に、
私の両肩を押し離し、

「晶、ゴールは反対側だから…。
僕がバトンを受け取ったら直ぐに向かうんだよ。
必ず誰より早く帰るから、ゴールで待ってて」

朋弥さんに5番目でバトンが渡り透弥さんがラストで受け取る。

前順全てにバトンが渡る時には、トップとビリの間に100m近くの差が付いてた。

アンカーは、1周半300mの距離を走り切る。

スタート時の瞬発力も勿論だけど持久力が勝敗を握る。

両者が一つ二つと順位を上げるが二人の間は縮まらなかった。

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