不器用なLOVER
100mを過ぎ透弥さんの前に三人、朋弥さんの前には二人となった。

「速ぇ〜足見えねぇじゃん…」

ゴール前でテープの片方を手渡され、

「マジでワンツーフュニッシュ決まりだな」

話し掛けられているのか、
独り言なのか。

「全学園の憧れの的お二方の頂上決戦かぁ」

隣で呟き続ける。

過去2回開かれた体育祭では、
二人揃って同じレースを走ることはなかったらしく、
透弥さんは進行役を、
朋弥さんに至っては走ること事態拒否を理由にリレー選手を断わり続けたそうだった。

「それが何でかお二方共に今回は快諾したんだってよ」

快諾?
昼休みには二人共溜め息吐いたり嘆いてたりしてたのに?

「調子に乗って次の縦割り選手も断わられるの覚悟で選出したら、承諾したんだってよ」

夏の陽射しがジリジリと肌を刺激し隣で話す彼が額の汗を肩で拭く。

唯立って待ってるだけなのにこの汗なら透弥さんは今頃…。

200mに差し掛かるのを横目に、

「最後の高等部での行事だから?大学進学すればこんな思いっ切り走ることもなくなるし…」

最後の…。
大学進学…。

自分で言った言葉が心を重く支配していく。

卒業したら会えなくなる。
関わり事態なくなってしまったら私は透弥さんに近付く事さえ出来ない。

< 206 / 315 >

この作品をシェア

pagetop