不器用なLOVER
三人に手を振って渡り廊下を歩く。

透弥さん何で私に頼んだのかな?
生徒会長推薦って言えば女の子なら誰でも引き受けたんじゃない?

選んでくれたことが擽ったくて、
自然にハミングが溢れる。

生徒会室前で立ち止まり、軽くノックする。
ノブに伸ばした手を、
掴まれた。
その手の先には、

「透弥さん…」

握られたまま引き寄せられ、

「君はこっちだから」

会長室に引き込まれる。

何が起きてるのか分からず、
ただ透弥さんの顔を見つめる。

口角を上げて言った。

「やっと来たね」

「あの…私、実行委員で」

何言ってんのよ。
だけど、
そんな真っ直ぐ見つめ返されたら

眼鏡をクイッと指で押し上げ、

「ああ、まだ大丈夫じゃない。
そんなに集まりがいい連中じゃないから」

繋がれた手を引いて、
ソファに移動すると、
隣に並んで座った。

「待ってたのに…」

「……私を?」

思いがけない言葉に、
鼓動が速くなる。

口角を上げて軽く頷く。

「勉強教えるって、言ったでしょ」

なっ、なあんだ。
そのことね。
あんなの、律儀に待ってたの?

「…勉強、教えて欲しいんじゃないもん」

期待した分重く心に乗しかかり、
本音を呟いてしまった。
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