不器用なLOVER
まだ二人は黙ったままで唯瞬きを繰り返す。

二人の視線が痛くて目を閉じた。

「あっ…えっと…したのは全員」

朋弥さんの遠慮がちな発言を、

「朋弥」

透弥さんが直ぐにたしなめる。

「レフュージを使った相手ってのは、恐らく三芳大の女」

三芳大。
新しい学校名に目を見開く。

「もういいよ…。自分で話すから朋弥は少し黙ってて…」

短い溜め息の後、
透弥さんの手が私の腕を掴み、
引き寄せられる。

目の前で肩に手を置き一転させ、その場に座らされ
背中から抱き締められた。

「三芳大の彼女は僕の三つ上の…姉さんみたいな人だったんだ」

囁く様な透弥さんの声が体の芯を刺激する。

「中等部で最初の縁談が破談して父が次に宛行ったのが彼女だよ。僕は父の目論見も考えず初めての情事に溺れてった…」

透弥さんの初めての人…。
透弥さんより年上で大人の女性。

「でも彼女は家柄的には…宮原に遠く及ばないいわゆる中小企業で縁談相手にも不適格とされてた」

時々漏れる吐息が耳に掛る。

「要するに…次に縁談がまとまるまでの密情相手だったんだよ。
盛りの時期に僕が間違いを起こさないための情婦っていうことに、本当は僕は気付かない振りをしてたのかもしれない…」

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