不器用なLOVER
口角を上げた透弥さんは、
相変わらず振り返ることもなく、

「無駄にしてるつもりはないし…朋弥を軽視したことなんて…、
一度だってあるはずないでしょ?常に僕の予想より上の働きをする優秀な人材だからね?」

淡々と言った。

「ったく…ズリィんだよな…。
んなこと言われりゃ…期待に応えない訳にはいかねぇじゃねぇか。全部計算済みで待ってやがったんだろ透弥?」

思い通りに動かされていたことを悟り悔しがる態度を、

「何のこと?」

鼻で笑う。

「嗚呼そうかよ。
望み通りやってやるよ俺がな…。理事長代理は高処の見物してな。但し俺の勇姿に惚れても晶ちゃん責めんなよ?」

朋弥さんの挑発にも、

「頼もしいね。遠慮無くお手並み拝見とさせて貰うよ」

余裕で返した。

簡易テーブルからマイクを掴み、壇上へと駆け上がって行った。

「朋弥さん大丈夫かな?」

不安を隠せなかった私の呟きに、

「朋弥なら大丈夫だよ。
人を惹き付ける才能なら僕よりも遥かに上だから…。
朋弥以上の適任者を僕は知らない…今は唯、朋弥を信じて欲しい」

透弥さんに静かに頷く。

私を抱えたまま、
透弥さんが立ち上がった。

「今から此処は注目の的になる…名残惜しいけどね?」

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