不器用なLOVER
息を吐くことさえ躊躇われる空間の中でどれだけの間そうしていただろう。

「…子供たちは和解し次に進んでいるようですよ?」

辰おじさんが口元を緩ませ外を
指し示した。

「いつの間にか我々は世間体や、体裁ばかりに…気を執られ過ぎていたのではないでしょうか?
此処に居る透弥君はまだ若いが、成る程流石は宮原グループ次期頭首に為る器を兼ね備えている。
我々は時に目に見え形に出来る物に拘り過ぎるのかもしれません。
今回は宮原透弥君の意見を尊重し全校生徒の夏季休暇を1週間返上しボランティア活動に充てるということで手を打ちませんか?」

途端にざわつく来賓方を代表し、PTA会長が立ち上がった。

「理事長の貴方がその様な発言をすべきではない。
大事な子供を預けているんだぞ。この学園では今後もことある毎に揉み消し該当者に処罰を与えないつもりなのか?
私の息子が巻き添えを食ったら、どう責任を取るつもりなのか?」

自分の子供がというのがキーワードになり、次々と言葉を発し始め収拾がつかなくなってくる。

やはり最後は自分の子供が可愛いということだ。

静かに成り行きを見守っていた、透弥さんが口角をゆっくり持ち上げた。

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