不器用なLOVER
「見合いはしないよ。
先方には遠方から来て頂くのに、申し訳ないけど当日は仕事の交渉しかするつもりはないんだ。
その件も含めて頭首には気付かれない様に水面下で相手の女性とはコンタクトを取る段取りなんだ」

透弥さんの背中に手を回して少し体を離すと顔を覗き込む。

「でも透弥さんにとって凄く良い話だって…」

その続きを遮った。

「僕にとって一番大切なのは晶。君以外に欲しいものはないんだ。出発を遅らせたのは少しでも傍に居てあげたいと思ったから」

真っ直ぐに見つめられる目に顔が熱くなって俯く。

「アフリカ行きの話をしてから、晶は強がってたけど寂しそうなの伝わったてたから…。
僕も放って置けなかったんだ」

頭ごと抱き抱えられ、

「晶は気付いてないだろうけど…僕の中心は既に君だから」

その髪にキスを落とす。

「君はまだ僕に振り回されてる…恐らくは慣れない学園での未経験からくる緊張の連続を…僕は利用してるだけなんだろうけど」

透弥さんの言った意味が分からずその胸を押す。

「…吊り橋の理論だよ。
恋愛と勘違いするって心理作用。例えそうであったとしても…僕は君を見付けた」

そのままそっと唇を重ねる。

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