不器用なLOVER
微かに触れたままで囁く。

「離さない…離してあげない…」

それが再び重なり、
次第に深くなっていく。

透弥さんの熱に意識を奪われ、
崩れ落ちる…
瞬間、抱き上げられた。

ソファに横たわらせゆっくりと、覆い被さってくる。

瞼に鼻に頬に…
焦らす様にキスを落とす。

啄む様に軽く何度も唇に触れる。

「透弥さん…」

自分で分かる程に熱で潤んだ目で見つめる。

「止める自信無い…」

透弥さんは眼鏡を外すと貪る様に唇を求める。

それが耳元へと移って行く。

「…晶…」

切な気な声で甘噛みし、
熱い吐息が首筋をなぞる。

「っ…ん」

私から漏れる声と、
扉を叩く音が重なった。

「お楽しみ中申し訳ないけど…、此処は学校で今は体育祭中って、覚えてねぇのかよ?」

その声に振り返れば、
入口の壁に寄り掛かり後ろ手で
ノックしている姿。

「…朋弥」

慌てて身なりを整え顔を赤くする私とは対称的に、

「ノックとは本来部屋に入る前にするものだと思っていたけど…、断りもなく入室した後にするものだとは初めて知ったよ」

口角を上げ朋弥さんを見据える。

「それが進行代わって段取り良く縦割リレーの選手まで交代させた陰の功労者に贈る第一声かよ?
大体…邪魔されたくなきゃ鍵閉めとけっての」

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