不器用なLOVER
向かい側に移動しドカッとソファに腰を下ろす。

「体育祭は無事終わらせたの?」

「嗚呼、滞りなくな」

何故この二人はこんなにも冷静にして居られるのだろう?

私は未だ熱った顔を両手で隠したままだった。

「んで…今年はMVPは該当者無しで良かったんだよな?」

朋弥さんに透弥さんが静かに頷く

「構わないよ…後夜祭への流れもあるからね」

後夜祭かあ…
朋弥さんにエスコートしてもらえって透弥さんは言ってたけど。

「そういや…今年は俺晶ちゃんと出て良いんだよな?」

タイミング良い朋弥さんのそれに一瞬僅かに眉を潜めた気がしたけど。

「勿論そのつもりだよ。
晶は朋弥に任せるって決めたから…どちらにしても僕は出られそうにないからね」

その口調はいつもと変わらずで…それが私の見間違い或いは願望だったのかもしれない。

「安心しろよ。本当の社交界には透弥に恥を掻かさない様なレディに俺がみっちり鍛えてやる。
透弥に恥を掻かす奴は…晶ちゃんでも赦さねぇからな。
覚悟しときな」

その目は笑ってなかった。

曖昧に微笑む私に代わり、

「手軟らかく頼むよ。
晶を泣かすことは僕が赦さない」

透弥さんが答えたのだった。

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