不器用なLOVER
唐突な提案に、

「……えっ?」

間抜けにも問い返していた。

透弥さんは自らの唇に指先を触れそれをそのまま私の唇に流した。

「か…間接キス…」

うわ言の様に呟いた私に
少々呆れ気味に返す。

「今更でしょ?
こんなことくらいで動揺されると…次に進めないんじゃない?」

「つ…次って?」

狼狽える私に、

「さあ…晶の期待してることかもしれないけど…違うかもね?」

妖しく微笑む。

「期待なんてしてないから」

熱る顔を誤魔化し声を張上げた。

「やっぱり本当は晶も分かってるんじゃない。
そんなに興奮すると最後まで持たないよ?」

「違っ…分かってるって…そんな…えっ?最後って?」

何も考えられる状態じゃない私は透弥さんの言葉に逐一反応する。

「晶は初めてのことだから色々と考え過ぎるのは仕方ないけど…。話を戻さない?」

「初めてって…やっぱり面倒だと…思ってるの?」

語尾に行くほど小さくなる声に、不安が滲み出ていた。

「誰でも初めてはあるんだから、寧ろ僕としては僕で良かったって思ってるよ」

透弥さんは一旦途切れさせると、

「本当に話を戻そう。
晶にも厳しくするつもりだから、気を抜かず最後まで頑張って」

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