不器用なLOVER
メイクとネイルが終わると、

「じゃあ後は志穂に任せて私達は部屋を出ましょ?
何か有れば呼んでね?」

背中を向けた鉄ちゃんの裾を掴み志穂さんが声を掛ける。

「あのさ…鉄ちゃんも居てよ」

志穂さんの提案に鉄ちゃんが目を見開く。

「何言ってるのよ志穂!
いつも依頼人と二人でしょ?」

私と志穂さんの顔を見比べる。

「えっと…この人こんな形してるけど…心は女でさ…良いよな?」

志穂さんは私の方を見てはいるが目線は外したまま聞いた。

「私は構いませんよ?」

寧ろ、
鉄ちゃんも透弥さんを想っているライバルなんだけど…、
志穂さんと二人きりは正直気不味くて耐えられそうもなかった。

「それは僕が許さない!」

透弥さんがドアを勢い良く開けて入ってきた。

「もっ…もちろんです」

鉄ちゃんが噛んだのは恐らくは、透弥さんの気迫のせいだろう。

「晶の衣装替えが出来ないなら、此処に居る必要は有りませんのでお引き取り頂いて結構です」

志穂さんを直視した。

長谷さんが慌てて戻り透弥さんに頭を下げると鉄ちゃんも並んだ。

「申し訳御座いません。
志穂にも悪気はありませんので、もう一度お考え直しください」

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