不器用なLOVER
そんなのズルイ。
今この状況の中で私が断れないの分かってて言ってるんだ。

耳元で話し続けた透弥さんの声が他の人に聞こえる筈がなかった。

「透弥さんはやっぱりズルイよ」

私の呟きに

「そうだね…少し卑怯だったよ。でも…晶なら分かってくれると、信じてたから」

微笑み返す。

そんな風に言われてしまっては、もう何も言えなかった。

「晶…また来るから」

透弥さんが部屋を出るのに合わせ長谷さんも鉄ちゃんも続いた。

残された私と志穂さんは互いに、無言のままだった。

どうしよう…。
やっぱり気不味い。
チラチラと志穂さんを盗み見る。

「時間ないし…始めて良い?」

志穂さんが私に近付くと体が反応して身構えてしまう。

「そんな警戒しなくても何もしやしないから…」

軽く息を吐き呟いた。

「その様子は透弥さんから聞いたんだ私達のこと…」

私達?
透弥さんと志穂さんのことだから確かに間違ってはいないけど…。今の言い方に棘がある様に聞こえ何と無く面白くなかった。

「透弥さんのプライベートな写真を…売り捌いたってホントですか?」

態と挑発するのは、
今は私の方が透弥さんに近いってアピりたかったのかもしれない。

「結果的にはそうなるんだよね。実際そのお陰で今の私があるんだ何言われても仕方ないけどさ。
それは朋弥さんに話し聞いたの?透弥さんじゃなくて?」

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