不器用なLOVER
Fourth passing
「何なら既成事実でも作っちゃえば?」

面白がって言った、三人の声が頭ん中を占領する。

既成事実って、
私はファーストキスも未だだって
あの三人は飛躍し過ぎ何だから。
大体好きとか分かんないのに…。

昨日のこともあるし、
ホントは迷ってた。
けど、三人と別れた後
私は向かっていた。


会長室のドアを叩く。

返事はない。

居ないのかなあ?

ドアノブをゆっくり回すと

「開いちゃった…」

自分で開けたけど、実際に開くとビビッた。

「失礼します」

囁くように呟いて、
静かに体を滑り込ませる。

室内には姿が見えない。

そのうち戻ってくるだろうと、
バッグから本を取り出し、ページを捲る。

2、3ページ読み進めたのだけど、慣れない読書のうえ、
見栄を張り過ぎたのか

活字が揺れる。
意識が…。

そのままソファに沈み、
眠りの世界に誘われる。


部屋のドアを開けて、
主が戻ってきた。

ソファの存在に気付かず、デスクに向かい、
パソコンのキーボードを叩く、
リズムカルな音が室内に流れた。

顔の眼鏡を外し、デスクに置くと目頭を押さえ、
前方を見据える。

そこで初めて気付く。

チェアから立ち上がり、
ゆっくり近付いた。

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