不器用なLOVER
私の怒声にも悪びれる様子もなく

「早く手足通して後ろ回して?
一人で着られないでしょ?」

平然と言い切り漸く手を外す。

「こんぐらい有れば少しは女に
見られるのかな?
私はのっぺりだからね…。
アンタの顔と同じだ?」

また毒舌な事を口にする。

でも不思議と最初の頃よりも、
棘を感じなくなったのは
私が志穂さんを少し分かってきたからかもしれない。

「最も…私が女らしくしてたら、余計に遠くなるから…辛いとこ。昔は髪も長くてさぺちゃなのは…変わらないけどね?」

短い髪を愛惜しそうに指ですく。

ノックする音に返事を返す。

「僕…入って良い?」

透弥さんの声に急いで扉を開け

「ありがとう…」

迎え入れた。

言葉なく私を見つめる透弥さんに

「変…かな?似合ってない?」

不安で押し潰されそうな胸を抱え息を飲んで目を閉じうつ向く。

顎に指が添えられ
その顔をゆっくり上げられる。

「もっとよく見せてよ?
下を見ていたら分からないでしょ僕のお姫様の顔…」

目を開けると
微笑む透弥さんの顔が近くって。

「キスしたら取れちゃうかな?」

耳元で妖しく囁かれる。

「平気ですわ!
流行の落ちないルージュ仕様。
思う存分味わってください!」

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