不器用なLOVER
「さあ時間も無い事ですしお支度整えてしまいましょう!」

私達の間に割って入る鉄ちゃんの声に振り返る。

まだ居たんだった。

恥ずかしさに熱る顔を背ける。

「僭越ながら私がお手伝いさせて頂きますわ!」

鉄ちゃんの気合いに

「お願い出来ますか」

透弥さんが平然と応えるので。

「えっ〜!」

思わず抗議の声を上げてしまう。

「何よ小娘私だと不満があるの?スタイリストは志穂しか出来ないなんて思ってるの?失礼ね!」

「そういうわけじゃ…」

おずおずと返すと

「じゃあ一体どういう訳よ!」

どうあっても問出そうという感じで鉄ちゃんが迫ってくる。

「申し訳ないけどそれ以上晶には近付かないで欲しい…」

スッと間に透弥さんが立った。

「申し訳ありません。
私ったら透弥様の御淑女に対して失礼致しました」

鉄ちゃんが深々と頭を下げるのを

「否…それは構わないんだ。
欠礼は晶に合ったんだからね」

肩を支え起こさせる。

透弥さんは誰に対しても
平等で公平な扱いをする。

自分が宮原だという傲りはなく、それでいて自分の立場を弁えて、大人の対応をしているんだ。

時折見せる甘い顔も
直ぐに影を潜め少し寂しかった。

< 291 / 315 >

この作品をシェア

pagetop