不器用なLOVER
志穂さんが口を開き。

「何それ…透弥さん透弥さんって告ってくれてるんじゃないの?
何で透弥さんが出て来るんだよ!今透弥さんは関係無いじゃん…。透弥さんに何言われたか知らないけどこんな時ぐらい鉄ちゃんの…本当の気持ち聞かせてよ!」

撒くし立てる。

そんな…志穂さん。

素直に好きだって言えば良いのに

ハラハラと見えない様子を
声だけで必死に探り続ける。

「だから俺は伝えるつもりなんて端からなかったんだよ。
それを透弥様が俺の気持ち志穂に伝えたりするから仕方ないだろ」

志穂さんに触発され鉄ちゃんまで声を荒げ乱暴に言い捨てる。

「透弥さんのせいにするのはもう止めなよ!
振りしてるうちに本当に振りじゃなくなってるんじゃないの?」

「どういう意味だよ?
志穂は今でも透弥様を好きなんだから悪く言われりゃ面白く無くて当然だよな!
俺はとんだピエロだぜ笑っちまう自分の恋さえ演じてたって訳だ」

「気持ちまで簡単に演じられる訳無いでしょ」

鉄ちゃんが鼻で笑う声と重なる。

「鉄ちゃんは透弥さんのこと好きだったよ!
異性としてじゃなくて憧れや尊敬の念を持ってたんじゃ無いの?」

志穂さんに応える声は無くて…、沈黙が支配していく。

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