不器用なLOVER


携帯の着メロが流れ、

「おい…」

男の顔に焦りが見え始める。

囃したてていた外野も静まり、

彼女の顔を窺っていた。

私のバッグから携帯を取り出し、電話を切るが



直ぐに鳴り出す。

「…マズくないか?」

男の手が緩み手首から離れた。

この期を逃すまいと
渾身の力で付き飛ばし、
上半身を反転させて、
抜け出した。

携帯に飛び付くと、

「助けて〜」

叫ぶ

「あっ、おい何してんだよ」

携帯を奪い返そうとするが、

「もう遅くてよ。携帯のGPSで直に誰か来てしまうわ」

彼女の言葉で、連中が逃げ出した。

私を睨みつけ、

「これで終りだと思わないことよ貴方の綺麗な体は記録させて頂きましたの」

冷たい微笑みで近付き、
私に携帯の画面を見せた。

それは紛れもなく、

押し倒され、

泣き叫び、

上半身を剥かれた…

先程までの私の姿だった。


「どういう意味かお分かりになるわよね?」

携帯を目の前にチラつかせ、

「よ〜く、お考えになられる方がよろしくてよ」



その場を去って行った。


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